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2027年4月、リースが全部バランスシートに乗る|今から数えるべきもの

2026.08.08 公開 / 2026.08.08 更新

借手のファイナンス・リースとオペレーティング・リースの区分がなくなります。会計処理の変更として語られがちですが、実務でいちばん重いのは処理の設計ではなく、社内に何本の契約があるかを数え上げる作業です。

「うちは関係ない」で済むかどうか

新しいリース会計基準(企業会計基準第34号)は、2027年4月1日以後に開始する連結会計年度および事業年度の期首から適用されます。2025年4月1日以後に開始する年度からの早期適用も認められています。

変わるのは借手側です。これまでのようにファイナンス・リースとオペレーティング・リースを区分するのではなく、原則としてすべてのリースについて、使用権資産とリース負債を計上することになります。

ただし、対象になるのは主に上場企業や会計監査人設置会社です。中小企業は現時点で強制適用の対象外で、中小企業会計指針に基づく従来の処理を続けられます。

それでも「うちは中小企業だから関係ない」と切り捨てられない理由が3つあります。

  • 取引先が対象企業なら、契約条件の見直しを求められることがある
  • 将来の上場やM&Aを視野に入れているなら、早晩対応が必要になる
  • 金融機関が財務指標を見る目線が変わる。オフバランスだった負債が見えるようになれば、業界全体の比較の物差しが動く

実務メモ:制度対応の仕事をしていたとき、いちばん時間を食ったのは会計処理の設計ではなく契約の洗い出しでした。どこにどんな契約が何本あるのか、社内の誰も把握していない。適用の何年も前から始めて、ちょうど間に合ったという感覚です。

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なぜ区分が廃止されたのか

従来の判定は、現在価値基準90%と経済的耐用年数基準75%という数値でした。この線引きには構造的な問題がありました。

契約を少し調整すれば、基準をわずかに下回るように設計できてしまうのです。リース期間を耐用年数の74%にする、リース料の現在価値を購入価額の89%に収める。そうすればオペレーティング・リースとなり、資産にも負債にも載りません。

実質的には長期の資金調達をしているのに、貸借対照表には何も出ない。この状態が国際的に問題視され、IFRSが先に区分を廃止し、日本基準もそれに続いた、というのが大きな流れです。

つまり今回の変更は、「形式ではなく実態で見る」という方向への揺り戻しです。同じ経済実態のものが、契約書の書き方ひとつで貸借対照表に載ったり載らなかったりする状態を解消しにいっています。

貸手側はどうなるか

見落とされやすい点ですが、変わるのは主に借手側です。貸手側の会計処理は、従来の区分が概ね維持されます。

貸手は引き続き、ファイナンス・リースとオペレーティング・リースを区分して処理します。ファイナンス・リースならリース債権やリース投資資産を計上し、オペレーティング・リースなら通常の賃貸借として扱う。この枠組み自体は残ります。

この非対称は、実務上ひとつの結果を生みます。同じ1本の契約が、貸手の帳簿ではオペレーティング・リース、借手の帳簿では使用権資産として資産計上されるという状態です。

不動産の賃貸借を考えると分かりやすい。オフィスを貸している側は従来どおり賃貸収入として処理し、借りている側は使用権資産とリース負債を計上する。両者の帳簿が鏡写しにならないのは、それぞれの基準が別の目的で設計されているからです。

自社が貸手と借手の両方の立場を持つ会社では、この違いを整理しておかないと社内で混乱します。

今から数えるべき5つのもの

適用は2027年4月ですが、準備は数字を集めるところから始まります。

① 契約の本数と所在

コピー機、社用車、サーバー、フォークリフト、営業所の賃借。「リース契約」という名前でなくても、資産を一定期間使う対価を払っているものはすべて候補です。部署ごとに個別に契約しているものが漏れやすい。

② 各契約のリース期間

ここが従来と最も違うところです。契約書に書かれた期間だけでなく、延長オプションや解約オプションをどう見積もるかが問われます。

「延長するのが確実に見込まれる」なら、その期間も含めます。事務所の賃貸借で自動更新を繰り返している場合、実質何年使うつもりなのか。この見積りが資産と負債の金額を大きく動かします。

厄介なのは、これが会計の判断ではなく経営の判断だという点です。「この拠点をあと何年使うか」は経理部門だけでは決められません。事業部門を巻き込む必要があります。

③ 割引率

リース料を現在価値に割り引くための率です。貸手の計算利子率が分かればそれを使いますが、通常は分からないため、自社の追加借入利子率を使うことになります。契約時期によって水準が違うので、まとめて1つの率で処理してよいのかを含めて整理が必要です。

④ 短期・少額リースの該当有無

期間の短いリースや少額のリースには、簡便的な取扱いが認められています。該当するものが多ければ、実務負担は大きく下がります。具体的な基準は適用指針で定められているため、自社の契約がどこに当たるかは顧問会計士と確認してください。

⑤ 財務制限条項

見落とされやすいのがここです。借入契約に自己資本比率や有利子負債の水準を維持する条項が付いている場合、リース負債の計上でその数値が動きます。

使用権資産とリース負債を両建てで計上すると、総資産が増え、自己資本比率は下がります。有利子負債の定義にリース負債が含まれるかどうかで、抵触の有無が変わることもあります。会計処理の問題が、契約違反の問題に化けるのがこの論点です。

抵触しそうであれば、事前に金融機関と協議して条項の見直しを求めることになります。これは数字が出てからでは遅い交渉なので、試算を早く終わらせる理由のひとつになります。

セール・アンド・リースバックへの影響

もうひとつ整理しておくべき論点があります。セール・アンド・リースバックです。

自社が保有する不動産や設備を売却し、その資産を売却先から借りて使い続ける取引で、資金調達の手段として使われてきました。売却で現金が入り、資産は貸借対照表から外れる。資産のオフバランス化と資金化を同時に実現するのが狙いです。

ところが新基準では、借手として使用権資産とリース負債を計上することになります。つまり売った資産が、形を変えてまた貸借対照表に戻ってくる

さらに、この取引がそもそも「売却」として認められるかという論点もあります。実質的に資産を手放していないと判断されれば、売却として処理できず、金融取引として扱われることになります。その場合、売却益も計上できません。

過去にセール・アンド・リースバックを実行した会社、あるいはこれから検討している会社は、期待していた財務上の効果が得られるのかを、適用前に確認しておく必要があります。

財務指標はこう動く

指標方向理由
総資産増える使用権資産が乗る
自己資本比率下がる分母の総資産が増える
有利子負債増えるリース負債が加わる
EBITDA上がる支払リース料が減価償却費と利息に振り替わる
営業利益やや上がる傾向利息部分が営業外へ移る
総資産回転率下がる売上は変わらず総資産が増える

EBITDAが上がるのに自己資本比率は下がる。見る指標によって印象が逆になるので、社内外への説明では両方を並べておくのが安全です。

また、費用の期間配分も変わります。従来の支払リース料は毎期定額でしたが、減価償却費と利息費用に分かれると、利息は初期ほど大きく、後半にかけて小さくなります。結果として費用の計上が前倒しになる、いわゆるフロントローディングが起きます。

影響が大きく出やすいのは、店舗や営業所を多数賃借している業種です。小売、飲食、サービス業では、賃借物件の数がそのまま計上額に効いてきます。逆に自社所有が中心の会社では影響が限定的です。

契約の洗い出しを社内でどう進めるか

最も時間がかかるのがこの作業です。経理部門だけでは終わりません。

まず「リース」という言葉を使わずに聞く

各部署に「リース契約はありますか」と聞くと、たいてい「ありません」と返ってきます。担当者の頭にあるのは、リース会社と結んだ設備リースだけだからです。

聞き方を変えます。「毎月または定期的にお金を払って、何かを借りて使っていませんか」。この聞き方にすると、駐車場、倉庫、サーバーラック、複合機、社用車、什器といったものが出てきます。

支払データから逆に探す

より確実なのは、会計データから継続的な支払を抽出する方法です。同じ相手に毎月ほぼ同額を払っている取引を洗い出せば、契約書がなくても候補が拾えます。賃借料、地代家賃、リース料、支払手数料あたりの勘定科目が入口になります。

現場へのヒアリングと支払データの突合、この両方向から攻めないと漏れます。片方だけでは必ず抜けが出ます。

台帳を作って、そこで止めない

洗い出しの成果物は契約台帳です。契約先、対象資産、期間、更新条項、月額、支払開始日。ここまで作れば試算に入れます。

そして重要なのは、この台帳を維持する仕組みを同時に作ることです。新しい契約が発生したときに台帳へ登録される流れがなければ、適用初年度に作った台帳は翌年には使えなくなります。一度きりの棚卸しではなく、業務プロセスとして組み込むところまでが準備です。

スケジュールの考え方

2027年4月から適用ということは、比較情報の準備を含めれば、実質的にはその前の期から数字を持っていなければ間に合いません。

  1. 契約の棚卸し:どこに何本あるかを全社で洗い出す。ここが最も時間がかかります
  2. 要件の整理:リース期間の見積り、割引率、免除規定の該当判定
  3. 試算:計上額と財務指標への影響を出す
  4. 影響の共有:財務制限条項、取引先や金融機関への説明
  5. 運用の設計:新規契約が発生するたびに処理する仕組みを作る

1番から3番までを早めに終わらせておけば、あとは運用の話になります。逆に、3番の試算を先送りにすると、影響の大きさが分からないまま時間だけが過ぎます。

試算は精緻である必要はありません。まず桁を掴むことが目的です。総額が数千万円なのか数十億円なのかで、社内での扱いも、金融機関への説明の必要性もまったく変わります。

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リース FO判定 簡易版

現在価値基準と経済的耐用年数基準から、従来基準でのファイナンス/オペレーティングの区分を判定します。新基準の下で使用権資産とリース負債をいくら計上するか、契約を並べて一括で計算するのはExcel版が対応しています。入力はブラウザ内で完結し、送信されません。

契約を判定してみる →

参照した資料

  • 企業会計基準委員会「リースに関する会計基準」(企業会計基準第34号)および同適用指針(参照日:2026年8月8日)
  • 企業会計基準委員会「リース取引に関する会計基準」(企業会計基準第13号)(参照日:2026年8月8日)
  • 中小企業庁「中小企業の会計に関する指針」(参照日:2026年8月8日)

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の会計処理について助言するものではありません。適用範囲、免除規定の具体的な基準、リース期間の見積り方法、セール・アンド・リースバックの取扱いについては、必ず顧問の公認会計士・税理士にご確認ください。

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