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英単語は何語覚えれば読めるのか|40本の英文で数えた、出現頻度のかたより

2026.09.30 公開 / 2026.09.30 更新

単語帳を前にして「何語覚えれば読めるのか」と考えたことはありませんか。英文40本の単語をすべて数えると、分布の強いかたよりと、覚えた語だけでは届かない理由が、数字ではっきり見えてきます。

英文40本の単語を、すべて数えた

英単語は、何語覚えれば英文が読めるようになるのか。単語帳を前にして、一度は考えたことがあると思います。

この問いに、統計の考え方で答えてみます。材料は、英語のものさしに載せている英語長文40本です。株式・金利・AI・環境・健康・教育・映画などをテーマにした、英検2級〜1級レベルの書き下ろしの英文で、1本あたり182〜261語あります。

この40本に出てくる単語を、すべて数えました。

項目数
英文の本数40本
延べ語数(出てきた単語の総数)8,527語
異なり語数(単語の種類の数)2,466語
1本あたりの平均の長さ213.2語

延べ語数は、同じ単語が何度出てきても毎回数えた総数です。異なり語数は、単語の種類の数です。英文 “the cat and the dog” なら、延べ語数は5、異なり語数は4(the が2回)になります。

数え方:大文字と小文字は区別せず、所有格の ’s は取り除きました。一方で、rate と rates、use と used のような語形の違いは、別の語として数えています。辞書の見出し語にまとめて数えると、異なり語数はこれより少なくなります。

上位10語で、本文の2割

出てきた回数の多い順に並べると、上位はこうなります。

順位単語回数延べ語数に占める割合
1the3624.2%
2a2392.8%
3to2252.6%
4and2002.3%
5of1742.0%
6in1301.5%
7that1211.4%
8is1101.3%
9for981.1%
10are780.9%

上位10語は、すべて冠詞・前置詞・接続詞・be動詞のような、文の骨組みをつくる語です。この10語だけで延べ語数の20.4%、上位100語で45.6%を占めます。英文のおよそ半分は、中学で習うような100語で書かれているということです。

6割の語は、1回しか出てこない

反対側も見てみます。40本の中で1回しか出てこなかった語は1,449語。異なり語数2,466語の58.8%にあたります。

ところが、この1,449語が延べ語数に占める割合は、17.0%にすぎません。種類で見れば6割、量で見れば2割弱。同じ「1回しか出ない語」でも、どちらで数えるかで印象がまったく変わります。

1語あたりの出現回数を代表値で見ると、分布のかたよりがはっきりします。

  • 平均:3.46回(8,527 ÷ 2,466)
  • 中央値:1回
  • 最大値:362回(the)

平均は3回を超えるのに、真ん中の語は1回しか出てきません。ごく少数の語が何百回も出てきて平均を引き上げる、右に長く裾を引いた分布です。こういう分布では、平均は「ふつうの語」の姿を表しません。平均と中央値のずれが何を意味するかは、平均だけ見て判断すると、なぜ外すのか|中央値と分布のかたちで詳しく書いています。

順位と回数は、両対数でほぼ直線に並ぶ

横軸に出現回数の順位、縦軸に出現回数をとり、どちらも対数目盛りにしたのが図1です。

← 図は横にスクロールできます →

単語の出現順位と出現回数(両対数)長文40本の2,466語について、横軸に出現回数の順位、縦軸に出現回数を、どちらも対数目盛りでとった散布図。点はほぼ右下がりの直線に並び、回帰直線の傾きはマイナス0.82、決定係数は0.955。 1101001,000110100 theaof 回帰直線 傾き −0.82(R² = 0.955) 出現回数の順位(対数目盛り) 出現回数(対数目盛り)
図1 単語の出現順位と出現回数(長文40本・2,466語、両対数)。上位40語は点に触れると単語と回数が出ます。

点は、右下がりのほぼ直線に並びます。対数をとった値どうしで回帰直線を引くと、傾きは −0.82、決定係数(R²)は0.955でした。順位が10倍になると、出現回数はおよそ 10−0.82 ≒ 0.15倍、つまり約7分の1になる、という関係です。

このように、単語の出現回数が順位に反比例に近い形で減っていく性質は、ジップの法則(Zipf's law)として知られています。法則の典型では傾きが −1 前後になりますが、今回のように英文が短く、本数も少ないと、傾きはそれとずれることがあります。

統計の授業で回帰分析を学ぶと、「直線に並ばないデータは、対数をとると直線になることがある」という話が出てきます。単語の出現回数は、その身近な例です。

何語覚えれば、何%分かるのか

では、出現回数の多い順に単語を覚えていったら、本文の何%が分かるようになるのか。延べ語数に占める割合を累積したのが図2です。

← 図は横にスクロールできます →

出現回数の多い順に覚えたときの、延べ語数に占める割合多い順に143語で50%、889語で80%、1,614語で90%、2,040語で95%に達する。最初の数百語で急に上がり、その後はゆるやかになる曲線。 05001,0001,5002,0002,5000%20%40%60%80%100% 143語で50%889語で80%1,614語で90%2,040語で95% 出現回数の多い順に覚えた語の数 本文の語のうち、知っている割合
図2 出現回数の多い順に覚えたとき、本文(延べ語数)のうち知っている語の割合。線に触れると、その語数での割合が出ます。
分かる割合必要な語数(多い順)
50%143語
80%889語
90%1,614語
95%2,040語
98%2,296語

最初の143語で半分に届きますが、そこから先は急に伸びが鈍ります。80%から90%に上げるには、さらに725語が必要です。

英語教育の研究では、辞書なしで文章を無理なく読むには、出てくる語の95〜98%を知っていることが目安とされています。9割の語を知っていても、10語に1語は分からない語が出てくる計算で、1文に1〜2語の未知語があると、読むのはかなりつらくなります。

ただし、図2には落とし穴があります:この曲線は、40本の英文から「覚える語」を選び、同じ40本で「何%分かるか」を測っています。問題を見てから答えを覚えたようなもので、割合は実力より高く出ます。2,466語すべてを覚えれば100%になるのは当然です。次の節で、この点を確かめます。

覚えた語で、別の英文はどれだけ読めるか

そこで、40本を前半20本と後半20本に分けました。前半20本に出てきた語を覚えたとして、後半20本の何%が分かるかを数えます。統計や機械学習で、モデルを作るデータと、確かめるデータを分ける考え方と同じです。

前半20本で覚える語覚える語の数後半20本で分かる割合
1回以上出てきた語(すべて)1,647語71.3%
2回以上出てきた語556語60.2%
3回以上出てきた語308語53.8%
5回以上出てきた語140語45.7%
10回以上出てきた語57語37.5%

前半に出てきた1,647語をすべて覚えても、後半20本では71.3%しか分かりません。図2では1,600語あまりで9割に届いていたのと比べると、別の英文では大きく下がります。後半の延べ4,090語のうち約3割、延べでおよそ1,170語は、前半には一度も出てこなかった語でした。

これは、統計でいう標本と母集団の関係そのものです。40本の英文は、世の中の英文全体(母集団)から取り出した小さな標本にすぎません。標本の中だけで数えた割合は、母集団ではたいてい低くなります。とくに、1回しか出ない語が大半を占める分布では、新しい英文を読むたびに新しい語が現れ続けます。

研究では、書かれた英文の98%を知っている状態になるには、見出し語のまとまり(活用形や派生語をまとめた単位)で8,000〜9,000程度が必要という推定があります。ここで数えた語形の数とは単位が違うので直接は比べられませんが、数百語や千数百語で届く目標ではない、ということは共通しています。

数字から見える、単語の覚え方

数えた結果から、学生の英語学習にそのまま使える考え方を3つ挙げます。

1. 上位の語は、読んでいれば自然に身につく

the、to、of のような上位の語は、英文を読んでいれば何百回も出会います。特別に覚える必要はありません。意識して覚える必要があるのは、出会う回数が少ない語のほうです。

2. めったに出ない語は、出会ったときに印をつける

1回しか出ない語は、次に同じ語に出会うまで間が空きます。出会ったその場で意味を確かめ、復習のリストに入れておく。自然に何度も出会うことが期待できない語ほど、仕組みで繰り返す必要があります。

3. 単語帳と、たくさん読むことは、両方いる

単語帳で覚える語には限りがあり、実際の英文には、覚えていない語が必ず混ざります。前半20本の語を全部覚えても後半の約3割が未知語だったように、読む量を増やして、知らない語に出会う回数そのものを増やすことが欠かせません。

英語のものさしの長文・穴埋め問題では、本文のすべての単語にカーソルを合わせる(スマホはタップ)だけで、意味と発音が表示されます。知らない語で読むのを止めずに済み、☆を押した語は単語帳に入って、あとで復習できます。

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英語長文 全40本|英語のものさし

この記事で数えた40本です。全訳・解説・音声つきで、単語にカーソルを合わせるだけで意味が出ます。英検2級〜1級レベル。無料・登録不要です。

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統計検定2級 実戦100問|統計のものさし

この記事で使った代表値、分布のかたち、回帰分析、標本と母集団。統計検定2級の範囲を、出題形式に合わせたオリジナル100問で確かめられます。

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参照した資料

  • 集計に使った英文:英語のものさし 英語長文40本(当サイトのオリジナル)。集計日:2026年9月30日
  • B. Laufer "What percentage of text-lexis is essential for comprehension?", in C. Lauren & M. Nordman (eds.) Special Language: From Humans Thinking to Thinking Machines, Multilingual Matters (1989)
  • M. Hu & P. Nation "Unknown vocabulary density and reading comprehension", Reading in a Foreign Language, 13(1) (2000)
  • I. S. P. Nation "How large a vocabulary is needed for reading and listening?", The Canadian Modern Language Review, 63(1) (2006)
  • G. K. Zipf "Human Behavior and the Principle of Least Effort", Addison-Wesley (1949)

本記事の数値は、当サイトの英文40本(延べ8,527語)という小さな材料で数えた結果です。英文の種類や分量、語の数え方によって数値は変わります。語数の目安は研究によって幅があり、読む目的や文章の難しさによっても異なります。