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個人向け国債の元本保証は本当か

金利が上がると債券はいくら下がるのか。スライダーを1本動かすだけで、国債・債券ファンド・株・ビットコインへの影響が同時に見えます。専門用語はぜんぶ後ろで解説します。

入力内容は送信されません。すべてブラウザの中で計算します

先に結論。3行で。

①「個人向け国債」は途中で解約しても元本割れしません。これは宣伝文句ではなく、財務省の計算式がそうなっているからです。ネットで見かける「個人向け国債も元本割れする」は、たいてい別の商品と混ざっています。

② ただし元本割れするものが3つあります。新窓販国債、証券会社で買う利付国債(2〜40年)、そして債券ファンド・債券ETFです。「国債だから安全」でひとくくりにすると、ここで事故が起きます。

③ そして、元本が守られていても損はします。インフレです。名目の元本保証と、買えるモノの量の保証は別の話です。この3つを、下のツールで数字にします。

金利を動かしてみる

つまみを動かすと、下のカードがぜんぶ同時に動きます。まずは右にぐいっと動かしてみてください。

いまから金利が +1.0% 動いたら?

−2%−1%0+1%+2%+3%

計算で決まるもの(債券)

=答えが一つに決まる。意見の入る余地なし

債券は「もらえる金額」と「もらえる日」が契約で決まっています。だから金利が動いたときの値段は、電卓を叩けば一意に出ます。ここに解釈の余地はありません。

仮定を置いたもの(株・金・ビットコイン)

=モデル次第で答えが変わる

こちらは契約書がありません。「金利がこう動いたら株はこうなるはず」というモデルを人間が置いて、はじめて数字が出ます。だから枠を点線にしてあります。各カードの下にある R² は「その関係がどれくらい当てになるか」の目安で、0に近いほど当てになりません。

この数字は 2026年9月4日時点のものです。自動更新はしていません。最新の相場で試したいときは、下の欄に入れ替えてください。

前提の数字を自分で入れ替える

なぜ金利が上がると債券は下がるのか

友達に100万円を貸したとします。利息は年1万円(=年1%)、10年後に100万円を返してもらう約束です。

ところが翌日、世の中の金利が上がって、利息が年3万円(=年3%)に上昇しました。ここで質問です。あなたのその「年1万円しかもらえない約束」を、誰かが100万円で買ってくれると思いますか。

買いません。同じ100万円を出すなら、年3万円もらえる新しい約束を買うからです。あなたの約束が売れるとしたら、値引きするしかない。これが「金利が上がると債券価格が下がる」の全部です。難しい話は一つもありません。

では、いくら値引きすれば売れるのか。足りない年2万円ぶんを、残っている年数だけ埋め合わせる金額です。残り10年なら約2万円×10年ぶん、残り2年なら約2万円×2年ぶん。

ここが肝心なところで、残り年数が長いほど値引き幅は大きくなります。「損な約束を、あと何年抱えなきゃいけないか」が値引き幅を決めるからです。この「あと何年抱えるか」を専門用語でデュレーションと呼びます。名前は難しいですが、中身は「我慢する年数」です。

2年債 10年債 30年債 いまの位置

グラフの3つの読みどころ

  1. どの線も右下がり。金利(横軸)が上がると価格(縦軸)が下がります。例外はありません。
  2. 30年債の線がいちばん急。我慢する年数が長いから、同じ金利の動きでも値段が大きく動きます。
  3. 線がまっすぐではなく、少し反っている。下に凸のカーブになっていますよね。おかげで金利が下がったときの喜びのほうが、同じ幅だけ上がったときの痛みより少し大きくなります。これをコンベクシティ(凸性)と呼びます。債券をもっている人へのささやかなボーナスです。

個人向け国債が元本割れしない、本当の理由

ここまで「金利が上がると債券は下がる」と説明してきました。では個人向け国債もそうなのでは?と思った方、鋭いです。答えはノーで、理由は個人向け国債が市場で売り買いする商品ではないからです。

証券会社で買う普通の国債は、途中で手放すときに他の投資家に売ります。だから相手が値切ってくる。ところが個人向け国債は、途中でやめるとき国が引き取ってくれます。しかもその値段が、あらかじめ決まっています。

中途換金でもらえる額 = 額面金額(元本) + 経過利子相当額 − 中途換金調整額

そして、中途換金調整額 = 直前2回分の各利子(税引前)相当額 × 0.79685

この 0.79685 という数字、なんだと思いますか。1 − 0.20315 です。利子を受け取るときに20.315%の税金が引かれているので、その税引後の金額に合わせるための係数。つまりこの式が言っているのは、「直近2回ぶんに受け取った利子を、返してね」ただそれだけです。

元本には一切手をつけていません。だから元本割れしようがない。これが「元本保証」の正体です。

「じゃあ利子2回分は損じゃないか」——そのとおりですが、すでに受け取った利子は手元に残っています。3年保有したなら利子は6回ぶん受け取っていて、返すのは2回ぶんだけ。差し引き4回ぶんは自分のものです。下の電卓で確かめてください。

中途換金シミュレーター

財務省の計算式そのままで計算します。1年経たないと解約できない点だけ、ご注意ください。

利払いは半年ごと、利子への課税は20.315%として計算しています。変動10年は「いまの利率が最初の1年続き、その後は想定した10年国債利回り×0.66(下限 年0.05%)に移る」という単純な経路を置いています。初回利子の調整額がある銘柄や購入月の端数は簡略化しているので、正確な金額は財務省の中途換金シミュレーションでご確認ください。

それでも見落とされがちな2つの落とし穴

落とし穴1:固定3年・固定5年は、金利上昇に置いていかれる

固定金利ということは、買った瞬間の利率が満期まで変わらないということです。その後に世の中の金利が上がっても、あなたの利率は上がりません。元本は減りませんが、「もっと有利に運用できたはずのお金が、低い利率に縛られている」という損は発生しています。

この点、変動10年は半年ごとに利率が見直されるので、金利上昇局面ではむしろ強い設計です。同じ「個人向け国債」でも性格がまるで違います。

落とし穴2:元本は守られても、買えるモノは減る

100万円が3年後に103万円になって戻ってきたとします。うれしいですか。その3年でモノの値段が7%上がっていたら、実質的には負けています。

上の電卓の「インフレ調整後の実質価値」がこれです。元本保証とは、金額の保証であって、価値の保証ではありません。ここを混同しないでください。

年限ごとに、どれくらい違うのか

ここからは、証券会社で買う「普通の国債」の話です。同じ金利の動きでも、年限によって値動きはまったく違います。

いまの金利 動いたあと
年限いまの利回り価格動いたあと変化率 デュレーション
我慢する年数
1年の利息で
耐えられる上昇

いちばん右の列を見てください。ここが一番のキモです。

これは「1年持っていれば利息がもらえるけど、その利息で吸収できる金利上昇はどこまでか」という数字です。2年債なら 1%以上の上昇に耐えられますが、30年債は 0.25%ちょっと上がっただけで、1年ぶんの利息が吹き飛びます。

「利回りが高い=金利上昇に強い」ではありません。むしろ逆です。30年債の利回りが2年債より高いのは、そのぶん危ないからです。世の中うまい話はありません。

もっと細かく見る(3ヶ月〜40年・クーポン別・カーブの形も変えられる)
年限クーポン利回り価格あと変化率損益修正Dコンベクシティ耐えられる上昇

「ゼロ金利期に発行された債券」に切り替えてみてください。2010年代に発行された低クーポンの超長期債が、いまどんな値段になっているかが出ます。これは仮定ではなく、割引計算をしただけの数字です。

株・金・ビットコインとの関係は、どこまで本当か

「金利が上がると金は下がる」「ビットコインは金利に弱い」——よく聞きます。本当でしょうか。雰囲気で語らず、実際のデータで確かめる方法を用意しました。

やることは単回帰分析です。名前は物々しいですが、中身は「点をたくさん打って、その真ん中を通る直線を1本引く」だけです。小学校でやった折れ線グラフに、定規を当てるようなものだと思ってください。

直線を引いたら、必ず R² を見てください。これは「その直線が、点のバラつきをどれだけ説明できているか」を 0〜1 で表した数字です。

R² = 1 なら点が全部きれいに直線に乗っている。R² = 0.1 なら、値動きの理由のうち直線で説明できるのは1割だけで、残り9割は別の理由ということ。R²が低い直線は、引けてしまうけれど、信じてはいけない直線です。

ここが一番だいじです。回帰は「関係がある」ことを証明しません。ただ「この期間のデータに直線を当てるとこうなった」と言っているだけです。期間を変えると傾きの符号がひっくり返ることも、実際によくあります。

自分のデータで直線を引いてみる

左に実質金利の変化(%)、右に資産の変化率(%)を、1行に1組ずつ貼り付けてください。カンマ区切りでもタブ区切りでも、スペース区切りでも読みます。証券会社やFREDからダウンロードしたCSVをそのまま貼れます。

データを貼って「直線を引く」を押してください。

今このページで使っている感応度

上の「仮定を置いたもの」カードは、次の値を使って計算しています。回帰を回すと、その結果がここに入ります。回していない項目は初期値のままで、これは私が置いた仮の数字であって、統計的な裏付けはありません。カードにも「仮置き」と表示されます。

資産β(実質金利+1%あたりの変化率)データ数出どころ

株式だけは β を使っていません。「株式益利回り − 国債利回り=イールドスプレッド が一定に保たれる」という、実務でよく使われる考え方で計算しています。PERの逆数が益利回りなので、国債利回りが1%上がったら益利回りも1%上がる必要があり、そのぶんPERが縮む、という理屈です。これも仮定であることに変わりはありませんが、βの掛け算よりは筋が通っています。

難しい言葉を、ぜんぶやさしく

デュレーション

「損な約束を、あと何年抱えるか」の平均年数です。金利が1%動いたときに価格が何%動くかの目安と覚えてもだいたい合います。デュレーション20年の債券は、金利1%上昇でおよそ20%下がる、という感覚です。

おもしろいのは、クーポンが低いほどデュレーションは長くなること。途中でもらえるお金が少ないぶん、満期まで待たされる度合いが強くなるからです。同じ40年債でも、クーポン0.5%のものは4.25%のものよりずっと激しく動きます。

コンベクシティ(凸性)

価格と金利の関係が、まっすぐな線ではなく少し反った曲線であること。この反りのおかげで、金利低下で得する額 > 同じ幅の金利上昇で損する額になります。債券保有者へのおまけです。デュレーションだけで計算すると、金利上昇の損を大きく見積もりすぎます。

イールドカーブ(利回り曲線)

横軸に年限、縦軸に利回りを取って、点を線でつないだグラフ。ふつうは右上がりです。「長く貸すほど不安だから、その分おまけをくれ」という当たり前の話が、そのまま形になっています。

スティープ化・フラット化

カーブの傾きがきつくなるのがスティープ化なだらかになるのがフラット化です。英語の steep(急な)と flat(平ら)そのままなので、覚える必要すらありません。

そこに「ベア(弱気=金利上昇)」「ブル(強気=金利低下)」がくっついて4種類になります。ベアスティープなら「金利が上がって、しかも長期のほうが上がった」。財政への不安やインフレ懸念が出たときによく現れる形です。ベアフラットは「金利が上がって、短期のほうが上がった」で、中央銀行が利上げしたときの典型です。

実質金利

実質金利 = 名目金利 − 期待インフレ率。銀行の金利表に載っているのが名目、そこから物価上昇ぶんを引いたのが実質です。

これがなぜ大事かというと、金や株に効くのは実質金利のほうだからです。金利が1%上がっても、インフレ期待も1%上がっていれば実質金利は動いていない。同じ「金利1%上昇」でも、中身が違えば市場への影響はまるで別物になります。ニュースが「金利上昇で株安」としか言わないとき、この区別が抜けています。

BEI(ブレークイーブン・インフレ率)

ふつうの国債の利回りから、物価連動国債の利回りを引いた差。市場参加者が「この先これくらい物価が上がる」と思っている数字で、期待インフレ率の代わりに使われます。

キャリー

持っているだけで入ってくる利息のこと。値下がりをこの利息でどこまで相殺できるかが、債券投資の勝負どころです。年限表の右端の列がまさにこれを計算しています。

R²(決定係数)

回帰で引いた直線の成績表。0〜1で、1に近いほど「この直線でよく説明できている」。0.2 なら 8割は説明できていないということなので、その直線を根拠に何かを決めるのは危険です。

よくある質問

Q. 個人向け国債は本当に元本割れしないの? 裏があるのでは?

A. 裏はありません。財務省の計算式に元本を削る項目が存在しないからです。ただし発行から1年間は原則として解約できません(災害で被災した場合と、保有者本人が亡くなった場合は例外)。この1年の縛りが、実質的な「代償」だと考えてください。

Q. 「国債は元本割れする」という記事を読みました。嘘なのですか?

A. 嘘ではなく、商品が違います。新窓販国債、証券会社で買う利付国債、債券ファンド・債券ETFは市場価格で売買するので、金利が上がれば元本割れします。「個人向け国債」という商品名は、これらとは別物を指しています。混同が起きやすいのは、どちらも「国債」と呼ばれるからです。

Q. 債券ファンドを持っています。満期まで持てば戻るのでは?

A. ファンドに満期はありません。ここが個別の債券との決定的な違いです。個別の債券なら、値下がりしても満期まで持てば額面が返ってきます。しかしファンドは中の債券を入れ替え続けるので、「満期まで待つ」という出口自体が存在しません。

ただし、悪い話ばかりでもありません。金利が上がった環境では、ファンドはより高い利回りの債券に入れ替えていくので、時間が経つほど分配の元になる利息は増えます。目安として「平均デュレーションと同じくらいの年数を持ち続ければ、値下がりを利息で取り返せる」と言われます。デュレーション7年のファンドなら7年、ということです。

Q. いま金利が上がっている局面で、何を買えばいいですか?

A. それは私にはお答えできません。金融商品の推奨はしませんし、そもそも「上がる」と分かっているなら誰も苦労しません。このツールでできるのは、「もし1%上がったら自分の資産がどうなるか」を事前に数えておくことだけです。

ただ、判断の材料として一つ。持っている債券や債券ファンドのデュレーションを調べて、金利が1%上がったときの下落額を計算し、その金額を見て平気かどうか。平気なら、その持ち方は無理をしていません。青ざめるなら、無理をしています。それは推奨ではなく、算数です。

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算出される金額は一般的な計算式による概算です。実際の債券には個別銘柄ごとの経過利子、日数計算、業者スプレッド、手数料、税金がかかり、結果は異なります。需給や信用リスクも織り込んでいません。

「仮定を置いたもの」に分類した株式・金・商品・暗号資産の数値は、統計的な予測ではなくモデル計算です。過去の関係は将来を保証しません。本ツールは特定の金融商品の売買を推奨するものではなく、利用により生じたいかなる損害についても作成者は責任を負いかねます。投資判断は一次情報(財務省、取扱金融機関の交付書面)をご確認のうえ、ご自身の責任で行ってください。