年収を、社会保険料と税を引いたあとの手取りに直し、残業と通勤を含めた拘束時間で割ります。額面の時給と、実際に手元に残る1時間あたりの金額は、かなり違います。
Input / 入力
協会けんぽの健康保険料率が都道府県ごとに違います
40〜64歳は介護保険料が上乗せされます
スーツ、書籍、資格、付き合いの飲食など
社会保険料は月給と賞与で計算が違うため分けます
一般の控除対象扶養親族の人数
拘束されている時間として実質時給に含めます
REAL HOURLY WAGE
—円
—
Breakdown / 内訳
Conversion / その支出は労働何時間分か
実質時給で割っています。「これは何時間ぶんの拘束か」という見方をすると、同じ金額でも印象が変わります。
ブラウザ版は「今の自分の実質時給を1本出す」ためのものです。条件を作り込んで比較したい場合は、Excel版があります。
Notes / 読みもの
年収500万円、週40時間労働。これを単純に割ると時給は2,400円ほどになります。ところが、この数字で生活の判断をしている人はいません。実際に使えるのは、社会保険料と税を引いたあとの金額だからです。そしてもうひとつ、時間の側も正確ではありません。残業も通勤も休憩も、あなたが自由に使えない時間という意味では同じです。
このツールは、その両側を実態に近づけます。分子を手取りに、分母を拘束時間に置き換えるだけの単純な計算ですが、出てくる数字は額面時給とかなり違います。
健康保険料と厚生年金保険料は、毎月の給与額に直接料率を掛けるのではありません。給与額を等級表に当てはめて標準報酬月額という区切りのいい数字に置き換え、それに料率を掛けます。等級は第1級から第50級まであり、健康保険は58,000円から1,390,000円まで、厚生年金は88,000円から650,000円までの範囲で決まります。
この仕組みには段差があります。給与が少し上がっただけで等級がひとつ上がると、保険料が階段状に増える。逆に、等級の中に収まっている限りは給与が増えても保険料は変わりません。標準報酬月額がどう決まるか、4月から6月の残業が9月以降の保険料をどう左右するかについては、社会保険料・手取り 簡易シミュレーターで段差の動きを見ることができます。
協会けんぽの健康保険料率は都道府県ごとに算出されます。令和8年度は全国平均9.90%で、最も高い佐賀県が10.55%、最も低い新潟県が9.21%。1.34ポイントの差があります。年収500万円なら、この差だけで年間3万円前後の違いが出ます。勤務先がどこの支部に加入しているかで、同じ給与でも手取りが変わるということです。
40歳から64歳の方には介護保険料が上乗せされます。令和8年度は全国一律1.62%。さらに令和8年度からは子ども・子育て支援金率0.23%が新設され、これも労使折半で負担します。40歳の誕生日を迎えた月から手取りが下がるのは、この介護保険料が始まるためです。
厚生年金保険料率は18.3%で、平成29年9月以降は変わっていません。労使折半なので本人負担は9.15%です。ただし標準報酬月額に上限があるため、高収入になるほど負担率は頭打ちになります。雇用保険は等級ではなく、実際に支払われた賃金額に対してそのつど計算されます。残業代にも賞与にも掛かります。
所得税は、給与収入から給与所得控除を引いて所得を出し、そこから社会保険料控除・配偶者控除・扶養控除・基礎控除などを引いた残りに税率を掛けます。税率は5%から45%までの7段階。ここに復興特別所得税2.1%が上乗せされます。
住民税は所得割10%と均等割の組み合わせです。所得割の計算は所得税と似ていますが、控除額が所得税より小さいものがいくつかあり、その差を埋めるために調整控除という仕組みが入ります。均等割は自治体によって異なりますが、標準は道府県民税と市町村民税で合計4,000円、これに森林環境税1,000円が加わります。
令和8年分から基礎控除が引き上げられました。合計所得金額が489万円以下なら104万円、489万円超655万円以下なら67万円、それを超えると62万円です。給与所得控除の最低保障額も特例で74万円に引き上げられています。多くの給与所得者にとって、これは減税です。
ただし注意すべき点があります。この引き上げは令和8年分の所得税から適用されますが、月々の給与から引かれる源泉徴収税額への反映は令和9年1月からです。改訂された源泉徴収税額表の適用がそこから始まるためで、令和8年中の月次給与は旧税額表で計算されます。つまり毎月の給与明細で引かれている所得税は多めになっており、年末調整でまとめて戻ってくることになります。「今月の手取り」を見て年間の実力を判断すると、今年に限っては低めに見積もることになります。このツールは年額ベースの試算なので、年末調整後の姿を表しています。
ここには唯一の正解がありません。このツールでは次のように置いています。
額面時給と手取り時給は「所定+残業」で割り、実質時給だけが通勤と休憩を含みます。これは、通勤と休憩が給与の対象ではないが自由でもない時間だからです。片道40分の通勤は、年間240日出勤なら320時間になります。1日8時間労働で40日分。ここを分母に入れるかどうかで、数字はかなり動きます。
仕事のための自己負担も分子から引いています。スーツ、書籍、資格の受験料、付き合いの飲食。これらは給与から出ていく一方で、給与明細には現れません。
このツールで東京都・38歳・賞与20%・扶養なしという条件を固定し、年収だけを動かすと、手取り率は次のように動きます。年収300万円で約80.5%、500万円で約78.5%、700万円で約75.9%、1,000万円で約71.4%、1,500万円で約67.3%。年収が5倍になっても、手取りは4.2倍にしかなりません。
理由は2つあります。ひとつは所得税の累進構造で、課税所得が増えるほど上乗せ分に高い税率がかかること。もうひとつは給与所得控除に上限があり、年収850万円を超えると195万円で頭打ちになることです。収入が増えても控除は増えないため、課税対象がそのまま伸びていきます。増えた年収のうち手元に残るのは、思っているより少ない——昇給や転職の判断では、この逓減を頭に入れておく必要があります。
ただし社会保険料には逆の動きもあります。厚生年金の標準報酬月額には上限があるため、そこを超えた分には厚生年金保険料がかかりません。高収入層では、社会保険料の負担率だけは下がっていきます。
ひとつは支出の判断です。12,000円の買い物が実質時給1,500円の人にとって8時間分の拘束にあたる、という見方をすると、金額の重みが変わります。上の換算欄はそのためのものです。
もうひとつは働き方の比較です。年収が50万円上がっても、残業が月20時間増え、通勤が片道20分伸びるなら、実質時給は下がることがあります。転職の判断で年収の額だけを見ていると、この逆転を見落とします。
ただし、実質時給が高ければよいという話ではありません。この数字は仕事のやりがいも、身につくスキルも、将来の年収の伸びしろも一切測っていません。あくまで今この瞬間の、金銭と時間の交換レートを見るための道具です。それ以上のことは言えません。